スマバトDXのトーナメント進行解説

概要

この前は スマバトDXのトーナメント形式解説を書いたけど、もうちょっと何か書きたいなーと思ったので。

今回はトーナメントの進行において工夫した部分の解説。 そういう部分って実際に参加しないと見えてこないというか、 現場の様子を写真や配信で知ったり、発表された大会結果を見たり、参加者のレポートを読んだりしても、 大抵の場合そういうことは書かれていないと思うので、書いてみようかなあと。

運営のノウハウは大会スタッフ経験をした人の中で確実に伝わっていっているように思えるけど、今回は別にそういう話ではなくて、こんな工夫したんだぜー(▽▽)ドヤアというだけのお話。

どんなところをアピールしたいかというと

  • 分割されたトーナメント用紙を掲示すると一つのトーナメント表になる
  • 掲示用紙と記録用紙が共通になっている

という2点。

後の文章は、なんでこういう形になったのかということの細かい解説なので 興味がある人だけ読んでもらえればと思う。

実際に作った形

文章の構成をあれこれ悩んだけど、出来上がった形をまず見てもらうのが一番じゃないかと思ったのでそこから解説する。

まず、ダブルエリミネーショントーナメント全体を5つ(総合ベスト6, 勝者側トーナメントベスト8-12, 勝者側トーナメント下位, 敗者側トーナメントベスト6-8, 敗者側トーナメント下位)に分割して管理している。

で、この5段階を

  1. 勝者側トーナメント下位
  2. 敗者側トーナメント下位
  3. 勝者側トーナメントベスト4-8
  4. 敗者側トーナメントベスト8-12
  5. 総合ベスト6

の順番に消化していく。2と3は同時進行できることもある。

(※念のため…無敗での1位を除く全てのプレイヤーが敗者側トーナメントに参加することになるので、敗者側トーナメントでの順位が最終的な順位になる)

この前の記事( スマバトDXのトーナメント形式解説)で載せた図に番号をつけた。これを見てもらうと分かりやすいと思う。

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1~5のそれぞれに試合結果の記録用紙が存在しており、そこに消化すべき試合が書かれている。 スタッフがそこに参加するプレイヤーの名前を記入し、会場に呼びかけてそのプレイヤー達を集め、 然るべき対戦台に移動してもらって、そこで対戦してもらう。結果は各自で記録用紙に記入してもらう。 終わったら、最終的に勝ち残った人に記録用紙を提出してもらう。

それぞれの用紙はこんな感じになっている。

1 勝者側トーナメント下位

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2 敗者側トーナメント下位

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3 勝者側トーナメントベスト4-8

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4 敗者側トーナメントベスト8-12

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5 総合ベスト6

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実際の使用例

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見てもらえれば分かる通り、各記録用紙を決められた位置に置くことで線が繋がって1つのトーナメント表が完成するようになっている。 提出された記録用紙はスタッフなりプレイヤーなりがホワイトボードにマグネットで貼り付けて、そのまま掲示用紙になる。

というのがスマバトDXでのトーナメント進行方法。 こう書くとかなりシンプルで、誰がやっても問題なく進められる…と思う。

ダブルエリミネーショントーナメント進行の注意点

ダブルエリミネーショントーナメントは「勝者側トーナメント」から「敗者側トーナメント」へと人が流れていく性質上、先に勝者側トーナメントを進めていかないといけない(例えば勝者側1回戦が終わってからじゃないと敗者側1回戦は始められない)。

試合数の関係で自然と勝者側トーナメントの方が早く消化できるようにはなるんだけど、実際の会場では「用意できる対戦台の数」という制限があるので、そこも考慮しないといけない。

敗者側トーナメントの方がずっと多くの試合数を消化しないといけないので、テレビを優先的にそちらに回さないといけない。例えば「敗者側1回戦が16組あるから、用意したテレビ16台を全て使います」とか。

この進め方を失敗すると「敗者側トーナメントを進めたいけど、まだ勝者側が終わってないから対戦相手が決まらない」という無駄な待ち時間が発生してしまい、大会進行に遅れが生じてしまう。

というわけで、スマバトDXの進行方法はその解決のための一例。 この分割方法は先の日記で紹介したケツバト(IKKIさん主催、2006-2007年開催)を参考にしている。 全く同じではないと思うけど、こんな感じにトーナメント用紙を分けて各対戦台に配布し、 各自で試合を進めるように促されていた。 このあたりの手腕は流石だなーと思った。

工夫した点

これも前回と同様、過去の大会に不満があったとか駄目だったとかいう話では無くて、 大会としては何の問題も無く成立してるんだけどこうやったら運営の手間がもう少し省けるんじゃないかなー、というお話。

方針の違いだと考えてもらうのが一番いいと思う。

  • 運営が少々しんどい思いをしてでも進行を徹底的に管理し、確実に時間内に終わらせるようにする
  • 出来る限り参加者に協力を仰ぎ、運営の手間をなるべく省いた上で大会を進行させる

スマバトDXは後者。「運営スタッフも大会に参加するので、出来るだけ負担を軽くしたい」ということを優先している。

スタッフ不在での大会進行

スタッフが不在でも開けるような大会が理想だけど、まあ流石にそこまでは無理として 出来る限り参加者同士が協力して試合を消化していく形を目指した。 その方がみんなで大会を作るっていう雰囲気も出ると思うし。

僕が大会の参加者としてよく感じていたことに 「今何の試合をやっているのか(トーナメントの進行はどのあたりなのか)を把握したい」 というのがあったので、参加者から見てトーナメントの全体像が掴みやすいようにしたかった。 ということで「全体を見られる大きな表」は必要になる。 でも、大きな紙やホワイトボードにスタッフが結果を随時書いていく形になるとやっぱりしんどい。

というわけで

  • 分割されたトーナメント用紙を掲示すると一つのトーナメント表になる
  • 掲示用紙と記録用紙が共通になっている

という、最初に書いた2つの項目が出てくる。

参加者に対戦結果を書いてもらったらそのまま掲示すればいいじゃないか、ということで今のような形になった。

参加者主導の大会を目指そうと思ったら参加者に「ダブルエリミネーショントーナメント」という形式そのものへの理解を進めてもらうことも大事なので、こうやって全体図とその分割を可視化することは後々生きてくるんじゃないか…ということも考えていた。

トーナメント表に各プレイヤーの初期位置だけを書き込んでおけば、 あとは各自が消化すべき試合を把握して、勝手に進めていってくれる…というのが理想。あくまで理想だけど。

実際には途中での各用紙への名前の記入とか、呼びかけて集まってもらうとか、そういうことは必要になってくる。 スマバトDXではトーナメントを5段階に分割してあるおかげで、途中で作業する時間と暇な時間とが切り分けられるようになっている。

PCを使わない理由

そういえばこれも忘れずに書かないと。 便利な進行ツールも出回っているのに、なんでここまでしてアナログにこだわるのかっていう理由。

  • トラブルが発生したときのデータ消失が怖い。アナログなら、仮に用紙にお茶をこぼしたりしてもまだ読めるし、まあ何とかなる。
  • 結果入力等のために参加者にPCの操作をさせるのは不安。ソフト等の操作方法を説明しないといけないことと、またこれもトラブル(誤操作等)が怖い。
  • スタッフだけがPCを操作するようにすればいいが、これは「運営の負担を軽くするため、参加者にもある程度手伝ってもらう」という方針と合わない。
  • 普段ノートPCは使っていないので、大会用にわざわざノートPCを用意しないといけない。
  • PCを使う場合、参加者にトーナメント全体図を見てもらおうと思ったら、プロジェクターを使ってスクリーンに投映する必要がある。(大東市立市民会館の場合)プロジェクター使用料を朝から支払うことになってしまう。
  • 会場で大会中にPCの操作をするのが面倒くさい(家でならいいけど、外で細かい作業はしんどい…)
  • パラマス形式のような特殊な形のトーナメント(スマバトDXのトーナメント形式解説参照)に対応していない

というのがある。

あとはツールの出力するトーナメント表が個人的にすごく見づらいというのもあったりする…。 僕が見たツールでは真ん中から左右に伸びていく形になってたけど、 あれよりも最後に1つに集まっていく形が見やすいと思ってる。 紙面の広さの割に空白が多く、表示したときに文字が小さくなりがちなのも不満点の一つ。

一番好きなのは下から上に進んでいって頂点で勝者側と敗者側が合流する形なんだけど、 用紙の構成の都合上それはやりにくいので スマバトDXでは勝者側・敗者側を左右に分けて最後に真ん中でくっつく形にしてある。

当初の構想

あとは割とどうでもいい、当初の構想について少し書いてみる。最初に考えていたのは、こういう形。

  • 1試合につき小さな用紙1枚を用意する
  • 用紙には、プレイヤーの名前と使用するテレビ番号が書いてある
  • 試合が終わったら結果を書き込んで本部まで提出してもらう
  • 各用紙をくっつけると1つのトーナメント表が完成する

こうすれば本部に人が居なくても大会が進められるという目論見があった。 概ねこの構想の通りに作られたわけだけど、その過程で「くっつけたら1つのトーナメント表になるような用紙って本当に作れるの?」って思って実際に書いてみたり、あれこれ考えてた。人に見てもらったりして。

で、流石に全試合を細かく分割すると大変なので数試合ごとに用紙を分ける今の形を思いついた。 先に書いたとおり、この分け方はスマブラXの大会を手伝ったときにIKKIさんから教わったトーナメントの進行方法を参考にしている(確かhikoさん主催のスマブラX大会「絢爛舞踏祭」(2009年開催)のとき)。

あとはスマバトDXを主催するコトさんのところに案を持っていって(何度も通って相談した)了解を得て、 ようやく2009年9月に第1回大会が開催できて…という流れ。

おわりに

以前の日記(スマバトDXのトーナメント形式解説)とこの日記を合わせると、スマバトDXのトーナメントの特徴が分かるはず…

  • トーナメント下位にパラマス形式を導入した
  • クラス制度を廃止して一つのトーナメントにした
  • 分割されたトーナメント用紙を掲示すると一つのトーナメント表になる
  • 掲示用紙と記録用紙が共通になっている

こうしてまとめてみると大した変更点でもないなーと思った(▽▽) 元々ほぼ完成されていたシステムに多少の変更を加えただけ。 それでいて説明ばかりご大層な…世の中そんなもんですよね(▽▽)

回が進む毎に細かい変更は加えられていった(予選の回数・スーパーシードの設定・トーナメントへの参加人数・遅刻者の扱いなど)けど、基本は今でも同じ。

謝辞?

僕自身は今はほとんど関わっていないけど、スタッフの方々がとても頑張ってくれていて本当にすごいと思っています。 用紙への記入の手間を減らした…つもりだったけど、予選から含めると結構膨大な量になっていたり、 勝者側から敗者側への移動先の記入も場所の確認が面倒くさかったり。 そういった細かな作業を担当して下さっている方々には頭が上がりません。

トーナメント進行以外の話としては、テレビ等の運搬・会場の予約・倉庫の管理・実況・配信・録画 etc ……。 本当にたくさんの作業があって、それぞれ協力してくれている人達のおかげで毎回無事に開催されています。 ありがとうございます。

他にも海外大会で広く使われるルールを取り入れた「スマバトDX Melee」が開催されていて、やる気のある人が頑張ってくれているんだなあ、と思いながら参加したり観戦したりしています。 新作の発売もだんだん近づいてきている中、今でもDXに本気で取り組んでいるプレイヤー達が居て、大会に関しても今後のことを見据えていろいろと考えている人達が居て、本当に感心するばかり…。