スマバトDXのトーナメント形式解説

はじめに

今更だけど、ちょっと作成時の理念みたいなものを解説したくなったので。 自分から解説するのは格好悪いな…とも思うけど、まあ5年も前の物だしいいでしょう。

(追記しながら書いていたので文体が安定していない部分もありますが ご了承ください)

[追記] 2014/05/24 32人トーナメントの図2枚を修正版に差し替え。前の図は敗者側が39人になってましたね(▽▽;)

今は

  • 「スマバトDX Melee」と交互に開催している
  • 昔より大会自体の頻度が減った

という事情もあって、この形式の大会は年に2,3回しか無いし、 トーナメント形式を変えませんか、みたいな話も出ているし、 まだ使われている間に解説しておくのもいいかも知れない。

※以下の大会名が登場します。混乱の無いように軽く説明。

スマバトDX

2009年から開催されている大会。 ステージルールとして、終点を中心に用いるのが特徴。 筆者がトーナメント作成を担当した。パラマストーナメントという方式を取り入れている。

スマバトDX Melee

2011年から開催されている大会。 ステージルールとして、複数のステージを使用する海外のスタイルを採用しているのが特徴。 こうのとりさんがトーナメント作成を担当された。 後述する「ケツバト」と同様の方式を採る。

ケツバト

2006年-2007年に開催されていた、IKKIさん主催の大会。 ステージルールとしては終点とプププランドを採用。 予選を複数回行って参加者をAクラスとBクラスに振り分ける方式。

それまでの大会形式

「それまで」というか要するにケツバト。 スマバトDX以前の大会の中で最も後期に開かれていたのがこれなので。

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図は スマバトDX Melee の説明用に作成したものだけど、ケツバトも進行は同じなのでこれを参照。

まあ要するに予選リーグを開催して、ブロック内で上位の成績を2回残せればAクラス。 そうでなければBクラスへ。

変えたかった点

※別にケツバトに不満があったというほどのことではないけど、僕が設計するならここを変えたいな、と思った点について。 もちろんケツバトにだって理由があってそういうシステムになっているわけで、 その辺りの理由を知らないまま自分好みに作り変えるならこうしたいな…というお話。

クラス分けは採用しない
  • ギリギリAクラスに入った人よりも、Bクラスの優勝者の方が強い気がする…。
  • 上位のプレイヤー以外には予選リーグ=本番みたいになってしまっているのでは。
実力差の大きい対戦を減らしたい

一般的に、トーナメントを開催するときは強い人同士がなるべく最初の方に当たらないように配置する。 だから、次のような形に配置する。 (番号の順に予選で好成績を獲得した、という前提)

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この場合、4番のプレイヤーは初戦で負けてしまう可能性が高い。 もちろん予選での成績が下位だったのは本人の責任なのだが、 もう少し勝てそうな相手と対戦出来ないものか。

ということで、これを以下のような形に組み替える。

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こうすれば4番のプレイヤーが最初に3番のプレイヤーと対戦出来る。 また、1番のプレイヤーの優位性も保たれている。

実装した形式

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まずは通常の32人ダブルエリミネーショントーナメント。 見慣れた形だと思われる。

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そして、これがパラマス形式を導入した32人ダブルエリミネーショントーナメント。 上の図と比べて、一番左の青い部分が入れ替わっている。 どこまでをパラマス形式にするかは設計者の自由だが、 スマバトDXでは主に全体を8つのパラマストーナメントに分割する形をとった。 ちなみに敗者側もパラマスといえばパラマスなのだが、 人数の都合上、この図では通常の32人ダブルエリミネーショントーナメントと変わらない。

なお、人数が増えた場合はパラマス部分が下に向かって伸びていく。 敗者側もそれに従ってパラマスの形を維持したまま伸びていく。

まあ要するに、

  • パラマス形式を導入した
  • クラス制度を廃止して一つのトーナメントにした

というのが(最も僕が主張したい)特徴。

考慮した点

トーナメント形式を考えるにあたって、考えたのは以下のような点。

できるだけ実力通りの順位が出るようにする

つまり、番狂わせを減らす。 遠征等、なかなか来られない人も居るので、変な負け方はして欲しくない。 実力の近い人同士を対戦させることで、それを実現した(つもり)。

最も実力通りの順位を出すには全員総当たりが理想的だと考えているが、 時間に限りがあるのでそれは出来ないし、 トーナメント方式の方が盛り上がる。 いかに限られた時間と機材で、順当な結果を出すかに腐心した。

実力が順位順になるようにする

つまり、クラス分けをしない。 くじ運で強いプレイヤーがBクラスに落ちてしまって…ということを無くしたかった。 (もちろんこのルールでもくじ運は存在するし、避けられない問題ではある)

早く負けてもある程度の試合数を経験できるようにする

これは予選の回数をある程度確保することで実現した。

下位の順位もなるべく細かく決めたい

先ほどの図を見ると、大会の参加者が何人になっても 同じ順位のプレイヤーは最大で8人までになる。 つまり、ベスト64(32人同列)という形にはならず、 ベスト32の後はベスト40、48、56、64、と細かく区切られる。

実力差の大きなプレイヤー同士の対戦を減らす。

「これで順位が決まる」という状況において なるべくギリギリの試合が出来るようにした。 上位のプレイヤーは、下から勝ち上がってきて勢いのついたプレイヤーを相手に戦うことになる。

なお、強い人にボコボコにされる経験も必要だと考えているが、 それはある程度ランダムに振り分けられる予選リーグで経験できるから大丈夫だという考え。

基本的には下位プレイヤーに配慮する

上位プレイヤーは「ダブルエリミネーショントーナメント」という形式そのものを楽しめる、と考えている。 勝ち抜けばそれだけで楽しいし、ダブルエリミネーションはそれ自体がとてもよく出来た仕組みなので この部分に手を加える必要は無い。 それよりも、すぐ負けてしまう下位のプレイヤーの満足度を高めることに集中した。 (この辺りは、筆者自身が下位のプレイヤーであることが大いに関係している(△△)  自分が(自分も)楽しめる大会を開きたい!)

運営的な事情

なるべく手をかけずにトーナメントを運営したい。 何故なら、主催やスタッフも大会に出るから! というわけで

  • 人の移動を減らしたい(人が頻繁に動くとみんな大変)
  • 少ないテレビでやりくりできるようにしたい(慢性的な機材不足…)
  • 1人ずつ呼びかけるのはなるべく避けたい

という点を重視。

「8つのパラマストーナメントを作って並列に進める」という形にすることでテレビが8台で済む。 もちろん、テレビが余ってもフリー対戦等に活用できる。

また、パラマス形式では多数のプレイヤーが1台のテレビを使うので、 試合が消化されるまではそのテレビの前で待機しておけばいい。 どこのテレビに入るのか、いちいち運営が呼びかける必要はなく、 いつ自分の番が来るのかも明確である。

終わりに

というわけでスマバトDXのルールは、こうなっている。

ちなみに「スマバトDX」(2009~)以前に僕がトーナメント作成に関わった 「CREO SMASH」(2006)でも大体同じことを考えていて、 スマバトDXもCREO SMASHと大体似たような形式になっている。 (わざとそうしたというより、自然と似た形になった)

僕の中ではこれが一番だと思ってるけど、好きに設計させてもらって、それで何十回も大会を開いてもらって満足しているので、特にこれから変わっていくことに異論はない。

実際、上位プレイヤーからは緊張感に欠ける、予選の意味がない(たとえ予選結果がビリになっても下から問題なく勝ち抜ける)、という指摘もあるので、その辺りも踏まえた新形式の提案に期待したい。

ちなみに「予選の意味がない」という要望については、予選の上位プレイヤーに対して パラマスを一気にすっ飛ばすシードを与えることで対応した。

「緊張感に欠ける」というのは、「ここで負けてしまうとBクラスに落ちるかも知れない」というような緊張感が無い、ということらしいが これはクラス制を廃した以上、どうしようもない。

まあ、僕自身が下位のプレイヤーなので上位の気持ちは分からないし、 割と安易に「緊張感も何も、どうせ勝てるやん」ぐらいに思ってしまっている(実際にはそんな楽に勝てる試合ばかりではないはず…)ので、そこはまあ、他の人の発想が必要になってくると考えられる。

以上。